はじめに
新型コロナウイルスの影響による株式市場への影響が不透明なため適正な投資タイミングを推測する方法を考えてみました。
この記事では米国のGDP成長率とS&P500の相関関係があれば今回のコロナウイルスによるS&P500の下落率を推測できるのでは?という仮説を検証してみたので書き留めます。
結論から述べると
・コロナウイルスによる影響は現時点で2020年Q2でGDP‐5%成長となる見込み
・GDPマイナス成長時にはS&P500騰落率との相関関係があり、S&P500は下落傾向にある
・上記の相関関係から見積もると、2020年Q1に対し2020年Q2のS&P500は約-14%となり$1,900台まで下落する
というような結論になりました。
新型コロナウイルスによるUS GDPの成長率への影響
Goldman Sachsのレポートによると新型コロナウイルスによるUS GDP成長率の影響は第一四半期で実質成長率0%、第二四半期で-5%という報告が出ています。通年での実質成長率も頻繁に下方修正されており、現時点での成長率予測は通年で0.4%とされています。
今後も感染拡大の影響によるGDP成長率下方修正の可能性は大いにあり、通年でマイナス成長となる恐れもあります。
下記原文引用(英語ですみません。)(2020/03/16発行)
As the epidemic in China grew to a global pandemic, the growth forecast has been revised further, to 0.4% for 2020, comprised of annualized real GDP growth of 0% in Q1, -5% in Q2, +3% in Q3 and +4% in Q4.
https://www.goldmansachs.com/insights/pages/from-room-to-grow-to-room-to-fall.html
レポートで述べられている主なGDP成長率変動要因としては下記の項目が挙げられています。
〇プラス成長
・医療サービス
〇マイナス成長
・ホテル、レンタカー
・食料品を除く日用品の需要減
本記事では一例として上記のレポート内容を基にS&P500予測を行います。
まずはS&P500の価格変化率とUS GDP成長率に相関関係があるのかを検討します。
(データ使用の根拠としては
・執筆時の最新状況を鑑みたデータであること
→欧米諸国の影響が明るみになってきたタイミングでのレポートのため計算精度が高いと判断
・公的機関のレポートであること。
→Officialレポートのため信憑性高い
今回は一例としてこの情報を基に推測を実施していきたいと思います。)
S&P500とGDP成長率の相関関係
今回使用した時系列データソースは下記になります。各年四半期ごとのGDP成長率・S&P500騰落率(各四半期の終値から計算)をデータセットとして分析を実施しました。
(この手の情報を収集する時に一元的に情報をまとめているサイトを知らないのでご存じの方がいましたらぜひぜひ教えてください。。)
・GDP:(セントルイス連邦準備銀行)Real Gross Domestic Product (A191RL1Q225SBEA)
・S&P500:(Yahoo! finance)S&P 500 (^GSPC) Historical Data
また今回は下記の理由から1995ー2019年までの25年間をScopeとして予測を行いました。
・経済サイクルは最長のもので50年程度。(”景気の4サイクル”などで調べると出てきます。)
・私の投資スタイルは長期投資を主としており、今後25年程度の期間での相関を読み取れれば良い。
・直近25年の相関関係が以後25年間も似たようなトレンドになると仮定した。
相関分析
まず直近25年間でのGDP成長率とS&P500騰落率の関係と相関係数を見てみます。
グラフ上では両データに大きな相関関係があるようには見えません。相関係数をみても0.465となり強い相関があるとは言えません。
今回はGDPマイナス成長率時のS&P500の下落率を推定したいので、GDP成長率がマイナスとなった場合におけるS&P500の騰落率のみをScopeとして相関係数を求めてみました。その結果、相関係数は0.837となり強めの相関があると言えそうです。
つまり上記の結果から言えることとして、
・GDPプラス成長の場合のS&P500騰落率は相関が弱いため推測が難しい
・GDPマイナス成長時はS&P500も下落傾向にある
と言えるでしょうか。GDPがプラス成長だからと言ってS&P500も上昇していくというロジックは成り立たなそうです。
Scope | 相関係数 | R2乗値(決定係数) |
全体 | 0.465 | 0.216 |
GDPマイナス成長時 | 0.837 | 0.701 |
新型コロナウイルスによるS&P500下落率推定
GDPマイナス成長時でのS&P500は下落傾向にあるということが言えそうなので新型コロナウイルスによるS&P500下落率推定を実施します。今回は決定係数が0.7以上であることから回帰分析での推測が可能と判断し、回帰分析を用いて下落率を推定してみます。
GDPマイナス成長時のS&P500騰落率の関係を描くと、下図のようになります。
今回のコロナウイルスにおけるGDP成長率は2020年Q2 で‐5%ということなので回帰式にそのまま当てはめるとS&P500下落率は2020年Q1に対し-14.4%となります。
2020年Q1はまだ終わっていないので2020年3月20日時点でのS&P500終値($2304.92)からQ2終了時のS&P500の価格を推測すると$1973.24となります。
2020年Q1だけで35%程度下落していますが、さらに下落することになりそうです。
まとめ
今回の内容をまとめると
・コロナウイルスによる影響は現時点で2020年Q2でGDP‐5%成長となる見込み
・GDPマイナス成長時にはS&P500騰落率との相関関係があり、S&P500は下落傾向にある
・上記の相関関係から見積もると、2020年Q1に対し2020年Q2のS&P500は約-14%となり$1,900台まで下落する
となります。
あくまで過去のデータからの推測ですので精度は保証できませんが、今後の市場動向を考える観点の一つとして考えていただければ幸いです。
本記事でデータの扱いや分析の手法がおかしい、改善する点があるなどあればぜひご意見いただければ幸いです。