目次
はじめに
こんにちは、本日は投資の基本である、金利と株価の関係について説明していきます。
最近投資関連のInputができていなかったので改めて基本から勉強しており、Outputもかねて本記事を執筆しました。
「金利」と「株価」は密接に関わっており、マクロな投資戦略を立てるのに知っておいて損はない知識だと考えています。
例えば、一般的に金利が下がると株価は上がる傾向にあります。(理由は後ほど説明いたします。)この前提を知っていれば今後の投資戦略として、「株式投資のほうがパフォーマンスが上がる可能性があるため株式投資メインにポートフォリオを組み替える」
など中長期的な投資戦略を立てるのに有用です。
本記事では主に
・株価に大きく影響する金利はどれか
・なぜ金利と株価に関連があるのか
・金利関連で見るべき指標はあるのか
の3点について解説をしていきます。
株価に大きく影響する金利はどれか
まず、ひとくちに「金利」と言っても住宅ローンの金利や、日銀が設定している公定歩合、国債の金利など種類が様々あります。その中で株価と関連があるとしている金利はどれを指すのかご説明いたします。
重要なのは長期金利(10年債金利が主)
結論から述べると1年以上の貸付金利となる長期金利が指標になります。その中でもさらに10年国債金利が重要な指標として使用されます。
ちなみに金利指標として採用される大まかな要件としては主に2つの条件が挙げられ、場合によっては3つ目の要件が加えられることもあるようです。
しかし、指標とされる銘柄については特定の機関や個人が選定するわけではなく、下記要件を満たす候補から市場全体で自然と合意形成されているのが実情です。
1.市中向け発行量が多く、流動性が高いこと
2.既発債が償還されるまでの残存期間が長い(十分に残っている)こと
3.クーポンレート(表面利率)がその時の市場レートに近いこと
日本株、米国株なら日本の10年債金利
現在、日本、米国株で重視されている長期金利としては日本国10年債金利が代表金利として挙げられます。
前セクションでも述べましたが、これは明確に10年債金利を代表指標としてみているというわけではありません。
現在の状況を見ると10年債を指標としてみるのが妥当という”市場の雰囲気”からそう判断しているだけなので今後永久的に10年債金利が代表指標となる保証はないのでご注意ください。
金利が変化すると株価はどうなる
それでは金利が変化した場合に株価の値動きはどのように動くのかを考えてみます。
長期金利が上がった場合
長期金利が上がった場合の株価の動きとしては景気拡大局面、景気後退局面の2パターンに大別して考えることができます。
景気拡大局面
景気拡大局面では金利と株価が上昇する傾向にあります。
これは、
・企業の設備投資などで資金調達の需要が高まる
・企業業績への期待が高まる
ことから金利と株価の上昇が同時に起こります。
株価が上昇することで債券や、金よりも高いパフォーマンスを出せる可能性があることから株式投資への需要が高まります。これによりさらに株価が高まることになります。
景気後退局面
一方で景気後退局面で金利が上昇した場合、
・資金調達コストが高まることによる設備投資などの需要落ち込み
・ローン金利上昇による個人消費の落ち込み(自動車、住宅など)
などの要因から企業業績低迷の不安が高まり、株価の下落につながります。
長期金利が下がった場合
次に長期金利が下がった場合は株式市場では何が起こるのでしょうか。単純に言えば前述した金利上昇時の影響と真逆のことが起こります。
金利低下により、資金調達コストが下がることから理論的には個人、企業ともに需要が喚起され景気が上向く可能性があります。一般的に「金融緩和政策」は政策の中に金利を下げる案が盛り込まれている ことが多いです。これは金利を下げれば景気が上向くという理論に則っているといえるでしょう。
金利と株価指標の関係を見てみる
日経平均株価と日本国10年国債金利の関係
左軸に日本国10年債金利、右軸に日経平均株価をとったチャートが下図になります。このチャートから読み取れることとして、
(1)利下げによる景気拡大(株価上昇)局面
(2)景気後退(株価下落)による金融緩和(利下げ)局面
の2つの局面を読み取ることができます。先述した金利と株価の関係性に則っている局面がいくつか見受けられます。
一方で新型コロナウイルスによる株価暴落に対しては金利が上昇方向に動いています。これは、コロナ以前にマイナス金利をとっていたこともあり、これ以上の金利下げは不可能と日銀が判断した可能性も考えられます。(あくまで推測です。)
S&P500と米国10年国債金利の関係
次に米国S&P500と米国10年債金利の関係を見てみます。こちらも日本同様、金利下げなどに起因する株価上昇が見て取れます。このチャートのポイントとして
(1)株価上昇の過熱を防ぐための金利上昇
(2)コロナ影響での株価下落に対する大幅な利下げによる株価回復
の2点に注目します。
(1)の局面は景気拡大局面で、景気拡大の過熱を防ぐために金利を上げていた可能性があります。一方で(2)では新型コロナウイルスの影響で急速に株価の下落が生じており、それに対し大幅な金利下げを講じていることが見て取れます。迅速に低金利化を行ったことで株価はすぐにリバウンドし、元の水準まで戻った事がわかります。これは財政出動の成功例とも言えるでしょう。
このように金利と株価にはある程度の関係性があると言えます。結果論ではありますが今回の新型コロナウイルスの影響による株価暴落も、米国市場最低の金利水準まで財政出動したという事実を知っていれば、株価がリバウンドするという推測もできたかもしれません。(結果論ですが、、)
今の金利は高い?低い?
次に現時点(2020年9月末時点)での日本、米国金利はどのような水準なのかを確認してみます。低金利が高金利であるかという判断基準については勘所がないので、今回は直近10年の平均金利より高いのか、低いのかという指標で判断します。
日本国10年債金利は低い
まず日本の10年債金利の推移と10年平均金利を見てみます。
20年9月末時点での10年債金利は0.01%、10年平均金利は0.38%です。平均以下の金利、すなわち低金利水準と言えると考えられます。ただし、直近10年間ではマイナス金利となっている時期もあるため、著しく低い金利水準にいるとは言えません。
米国10年債金利はかなり低い
次に米国の10年債金利の推移と10年平均金利を見てみます。
20年9月末時点での10年債金利は0.65%、10年平均金利は2.23%です。平均からかなり低い金利であると考えられます。また、直近10年の金利を見ても最も低水準となっていることがわかります。
まとめ
今回は金利と株価の関係についてご説明いたしました。
ご説明した内容をまとめると、
- 金利が高くなった場合、株価は下落基調になる
- 金利が低くなった場合、株価は上昇基調になる
- 株価とのひも付きが強い金利指標は長期金利であり、主に10年債金利が重視される
- 日本国債金利はここ10年平均で見ればやや低金利水準にある
- 米国債金利はここ10年の平均で見ればかなり低金利水準にある
という事がわかりました。
あくまで金利と株価の関係は理論であるため、その時々の情勢でこの関係がなりたたないこともあります。
また、現在は新型コロナウイルスが原因で世界的に経済不安が広がっていることから金融緩和政策の一貫として金利水準も低くなっています。コロナが落ち着くまでは低金利水準が続くと思いますが、外出禁止などの経済的インパクトも大きいと考えられるため株価も軟調に推移するとかんがえられます。
しかし、金利の推移を観察しておくことで経済がどのような状況にあるのかを推察する指標になりますので、ぜひとも日頃から気にかけて観察してみて下さいね。
なお、今回金利、株価指標のソースとして使用したのは セントルイス連邦準備銀行のデータベースを利用しました。
Federal Reserve Economic Data | FRED | St. Louis Fed